最後のクラスTシャツ
2020年08月20日 18時36分
私が高校生の頃の話です。私の高校は、私の代をもって他校と合併することが決まっていました。その為、文化祭や体育会と言った行事も年々小規模な物へと変化し活気がなくなってたように感じます。
けれども、この高校最後の文化祭の時、何かできないかという生徒会の発案から、クラス対抗のクラスTシャツコンテストを開催してみようという意見が上がりました。
私のこの時の気持ちは、「うわーめんどくさ」っと考えていましたが、流石に言える空気ではないので流れに身を任せました。
勿論その案は可決され、翌日からクラスTシャツの作成が開始されました。
私はイラストやデザインのセンスは本当に無いので意見は出しませんでしたが、1週間ぐらい図案で揉めたことを覚えています。
最終的には、当時の担任の先生をゆるキャラっぽく、前面に描き、後ろにクラス全員の名前をお洒落に記述することで話はまとまりました。
ただここで一つ大きな問題が出てきます。私のクラスは40名なのですが、まだ一度も見たことない生徒が一人だけいました。俗にいう不登校の生徒です。
と言っても私は小・中と同じなのでどんな子か分かりますし、なぜ不登校になったのかも知っています。
私としては当然、名前を入れてくれるものだとばかり思っていましたが、下書きのイラストを見せてもらった際にその子の名前だけが抜けていました。
私としては、なぜ入っていないのか問い詰めたい気持ちですが人前で意見を言う性格でもないので私は見て見ぬふりをしました。
しかし、家に帰っても授業を聞いていても罪悪感からか、その子のことをずっと考えてしまいます。
誰かに聞いてもらおうかとも思いましたが、「偽善者」と言われたりしないかなど小さなことで悩み誰にも伝えることができませんでした。
そして、私が中々言えない間に日はどんどん過ぎて行き、最終確認の段階まできました。
あとは印刷所に図案を渡すだけと言う時です。私はこのままでは一生後悔するのではないかと考え、こそっと呟いてみました。
「〇〇の名前ぬけてない?」っとほんとに小さい声で呟きました。誰かが聞いてくれるのではないかと・・・。
行動にすることはいいですね、隣の席の仲良い友達が見逃しませんでした。
私の性格を理解している友達だからこそかもしれませんが、すぐに「〇〇もクラスメイトやから名前いれとこや」っと言ってくれました。
こうして出来上がったTシャツで優勝することはできませんでしたが、後の卒業式で〇〇君が学校に来た際に渡すことができ、名前が入っていることに喜んでもらえたので、
私自身何か特別なことをしたわけではないですが、最後のクラスTシャツはとてもいい物になったのではないかと思います。